クロユリハゼの休日

やま とり うた みる きく よむ うみ など

#9 【版を奏でる】@伊丹市美術館

浅野竹二[1900-98]の木版画展。作家最晩年の文章に〝へっぽこ絵描き〟という言葉が好きだとある。スケッチ帳の写生や生活のために彫ったという名所絵版画は写実を極めるが、作家が〝自由版画〟と呼んだ木版画作品は歳を重ねるほどにシンプル、抽象に。どこか〝まどみちお〟の詩に重なるような温かいユーモアがある。晩年のグワッシュ作品群を観て、まどさんの抽象画とも重なった。また、鳥を偏愛したというところにも共感してしまう。(ルリビタキの写生も展示してあった。)鳥だけでなく、生き物が好き、自然への愛着が作品ににじみでている。〝自由版画〟は作家が50才頃から創作をはじめ、晩年の自由さ加減ほどのびのび度が高く見える。やはり長生きはするものである。

没後、スケッチ帳を含む作品群は京都精華大学に寄贈されたとのこと。2000年にこの大学で開催された遺作展の図録を購入した。

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