クロユリハゼの休日

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#33 【アニュス・デイ 】Agnus Dei

東京混声合唱団演奏会@いずみホール
指揮者 尾高忠明氏がアンコールに選んだ曲はエルガー作曲のAgnus Deiだった。ミサ通常文、「神の子羊」による平和賛歌。昨年の台風中止の振替公演として開催されたこの演奏会。尾高氏はこのアンコール曲によって、政府の自粛要請で公演中止が相次ぐ中、おそらくぎりぎりの判断の上で開催された今回の公演の意義を見事に位置づけられたと思う。われらに平安を与えたまえ、と最後まで滔々と息長く続く音楽がいずみホールに響きわたった。f:id:kuroyurihaze:20200229225217j:image

さて、

尾高氏が東混を振るのは、半世紀に及ぶ指揮生活で今回(東京公演を含めて)が初めてという。プログラムは氏が精通するイギリスの作曲家エルガーブリテンの曲と、実兄の尾高惇忠、師の三善晃組曲という構成。三善晃は尾高氏の結婚式で仲人挨拶を新郎新婦を立たせたまま45分間喋ったそうだ。そして今回の合唱組曲が『嫁ぐ娘に』というのが笑える。

最初に演奏された尾高惇忠の組曲以外は全て無伴奏曲で、いずみホールは東混の細やかな表現を過不足なく伝えてくれる。エルガーの曲は技術的にとても困難な曲だそうだが、そうとは感じさせないところが〝とうこん〟。

ステージの切れ目ごとに尾高氏がマイクを握ってのお話が楽しい。桐朋でピアノの師が三善晃だったが年に一回しかレッスンがなく卒業まで3回だけ。ベートーヴェンソナタを弾いたあと三善晃手作りのお菓子でお茶タイムだったとか、ソルフェージュが苦手だったのが井上道義と尾高氏で、今日のエルガーの歌なんか絶対歌えないとか。現在、大阪フィル音楽監督尾高忠明。前任者が井上道義。音大でソルフェージュの成績が悪かった音楽監督が二代続いていることになる。