クロユリハゼの休日

やま とり うた みる きく よむ うみ など

#106 オーラルヒストリー

昔、我が家が日経新聞をとっていた頃に愛読していた連載欄に「私の履歴書」がある。経済界だけでなく、いわゆる文化人など多士済々が語る自叙伝が気軽に読めて良い。似たような欄が朝日新聞にもあって、今は政治学者の御厨貢さんが連載中。

御厨氏は政治家から直接聞き取りをする〝オーラルヒストリー〟の手法で研究するスタイルを築いた学者。(この連載の名も〝語る〟なので、オーラルヒストリーの一種かも。)政府の審議会などにも関わるようになり、今朝の記事では、天皇生前退位をめぐる有識者会議の事を生々しく語っている。

同じ紙面に別の連載があって、こちらは曜日毎に執筆者が変わる。現在木曜日担当(隔週)が歴史学者の與那覇潤さん。彼の事はこの連載で初めて知ったのだが、ズバズバと物言う文章を書いておられる。批判精神旺盛でかなり刺激的。

今朝の内容は、簡単に言うと〝オーラルヒストリー批判〟。御厨氏の連載に敢えてぶつけてきたところが與那覇氏らしく、思わずニヤけてしまった。政治学の分野での〝オーラルヒストリー〟の流行がもたらす短所に物申している。若い政治学者に元気がない事に、この流行が関係する印象をお持ちらしい。長所の裏面に(つまり短所に)「無自覚な学者に政治はわかるまいし、まして歴史を語る資格はあるまい。」と。痛烈である。

 

同じ今朝の紙面に瀬戸内寂聴さんが月一回のペースで連載中の〝残された日々〟が。第61回〝書き通した「百年」〟。今日の文章、あまりお元気でない様子。コロナ禍で外出や人との出会いがなくなり、「生きてる意味がない。」いつになく気力が弱られているのか。「六十回も書かせてくれた新聞の編集部と、飽きもせず、読み続けてくれた読者の方々に心からのお礼を捧げる。」とも。

 

さまざまな連載で充実の文化・文芸欄。これからも要チェックである。