クロユリハゼの休日

やま とり うた みる きく よむ うみ など

#118 ・1985年8月12日

ある出来事とある場所が、その出来事が起こった日付とともに記憶される、ということがある。その記憶は、毎年、その日に流されるニュースによってさらに強化される。

1985年8月12日、僕は職場の同僚二人とテント泊のため白馬大池のキャンプ場にいた。前日は白馬大雪渓を登り白馬岳のテント場で一泊、二泊目が白馬大池、次の日は蓮華温泉に下る縦走の山旅である。

白馬大池では、夕食を済ませてテント内で気象情報を聴くためラジオをつけていた。シュラフに入って、後は寝るだけというひととき。

ニュース速報が、羽田発伊丹行きの日航ジャンボ機が消息を絶ったと伝えた。その瞬間から、テント内の三人は就寝どころではなくなり、ラジオをつけっぱなし。ノンストップで続く緊迫したラジオニュースを深夜まで聴き入った。

この山旅の記憶の大半は白馬大池での夜のテント。白馬大雪渓は思い出せるが、白馬山頂も縦走路の様子も蓮華温泉もどこかに吹っ飛んでいる。

山旅の記憶のかわりに、下山後に見た御巣鷹の墜落現場の映像や、奇跡的に救出された人がヘリに収容される映像などが蘇る。

35年後の今日も、テレビやラジオは御巣鷹の慰霊登山など日航ジャンボ機墜落関連のニュースの数々を伝えていた。僕は脳の中で、その度に35年前の白馬大池でのテント内に瞬間移動するのだった。

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