〝じつげつしきさんすいずびょうぶ〟は楽しい絵だ。
春夏、海原に浸かったような緑なす山々の間から金色のお日様がにっこり。松の木々はカラダをくねらせ根でステップをきってダンシング。海の波頭も踊ってるようにしか見えない。うねる大波は、海が荒れているというより、山々がウキウキ動くので揺らされているよう。春の山にはサクラが咲いた!
装飾の金箔、銀箔もリズム感のあるカタチの箔がちらちらと振りまかれて動きを感じる。
秋冬の山々の間では大口を開けて銀色の月が笑っている。冬の山々は雪化粧を喜んでいる。松の木は、秋を迎えてやっぱりダンシング。
屏風でありながら、アニメーションのような動きがある。大きな動き、小さな動きが、おおらかで大胆な構図の中で愉快に合わさっている〝日月四季山水図屏風〟
そして、気品も併せ持つ。
作者不明。室町時代の大和絵、土佐派の流れの中に突如現れた天野山金剛寺の屏風。
灌頂の儀式の際に用いられたと考えられているそうなので、ばりばりの公式行事用。
天野山金剛寺は南北朝時代に南朝の後村上天皇の行在所として天皇が住んでいた寺である。
↑特別公開されているのは、北朝の上皇の御座所がある奥殿の建物内。(対立する北朝と南朝両方の御座所が同じ寺にある。)その御座所の部屋のすぐ横の座敷である。格式の高い部屋に置かれても、何ら遜色なく調和している。…というか寧ろ相応しい。
美術館よりずっと豊かな気持ちで観ることのできる、年にたった二回だけの特別公開。
座敷の畳の上で、正座したり立ってみたり、位置を様々に変えて向き合う時間。屏風と鑑賞者の間には何もない。同じ空間で、同じ畳の高さで向き合う〝日月四季山水図屏風〟
また来年。
※〝日月四季山水図屏風〟は平成30年に国宝に指定された。認知度が上がってきて鑑賞する人が増えているようだ。5月5日と11月3日に公開だが、今回は11月1,2,3日の三日間の公開だった。