クロユリハゼの休日

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#179 ぼくらが非情の大河をくだる時

劇作家 清水邦夫氏が亡くなられた。

 

ぼくは高校で山岳部に所属していた。ほとんどが同学年のこじんまりしたクラブだった。そんな中、秋の文化祭に山岳部も参加しようとT君が提案してきた。清水邦夫の戯曲「ぼくらが非情の大河をくだる時」を上演しようという。

 

運動部が文化祭に参加とは面白い、文武両道だ。顧問の先生も賛同してくれた。山岳部はにわか演劇部となり準備・練習が始まった。

 

清水邦夫の戯曲は当時の前衛劇。たしか公園の公衆トイレの場面設定で、本番はパンツ一丁で演じるというかなり過激な内容だった。山岳部で教室をひとつ借りて上演した。まるでアングラ劇である。

 

戯曲の内容はさっぱり思い出せないのだが、しっかり覚えていることがある。

 

戯曲の内容について、顧問の物理の先生も交えて議論した思い出。場所は河内長野の滝畑の河原。南葛城山沢登りだったか、前日に自治会バスで滝畑に入り、光滝寺付近の河原にテントをはった。当時、まだ滝畑ダムは存在しない。

 

夕食を終え、河原で焚き火を囲んで深夜まで議論した。山岳部のテント泊で焚き火をしたのはこの時だけなので印象が強い。

議論の内容は忘れてしまったが、T君を中心に顧問の先生(まだ二十代だった)も結構熱く語っていた思い出がある。

 

文化祭本番、教室に公衆トイレのセットを組みパンツ一丁で臨んだ〝ぼくらが非情の大河をくだる時〟。観客はどんな感想をもったのか、写真は一枚もなく、今となっては幻のような熱く燃えた山岳部の思い出。

          

            4月17日(土)

 

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