クロユリハゼの休日

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#180 THE SENSE OF WONDER

レイチェル・カーソンセンス・オブ・ワンダー』を図書館で借りて読んだ。

 

ひとの持つ、視覚、聴覚、臭覚、触覚などの感覚を使って、自然から何かを感じとる経験とは。

 

明神平でのある朝の経験を思い出す。

 

ブナやカエデの原生林で焚き火を囲んだ春の夜、皆はテントへ、僕はそのまま焚き火の横でシュラフに入って寝た。

森の夜は静かで生き物の気配は全くなく、まるで宇宙空間で眠るよう。さすがに少し寒く、うつらうつらと時を過ごした。

夜明け前、まだ薄明さえ感じない森の中。仰向けに寝ていた僕の斜め頭上の一点で小鳥のさえずりが始まった。

次の瞬間、その一点から同心円状にさざ波がひろがるように次々と小鳥のさえずりが始まった。さえずりの波は小さな谷や峰を越えた場所からも次々に始まり、波同士が干渉し合うさままで見えるようだった。その間、わずか数秒。つい先ほどまで沈黙していた森は、何百羽という小鳥の鳴き声で満たされている。

そして、薄明が訪れた。

 

この朝の経験は、レイチェル・カーソンの言うように人生の中の幸福な経験というべきだろう。

 

それにしても、

僕の頭上で鳴き始めた小鳥はたまたま一番に目覚めたのか。それとも、何百羽という森じゅうの小鳥はすでに目覚めていて、最初の合図を誰かがするのを息をひそめて待ち構えていたのか。

きっと後者だろう。

後者だと思いたい。

 

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