クロユリハゼの休日

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#188 ヘックス

六角形という意味の名前を持つヘックス。

〝グレートスイスマウンテンドッグ〟という犬種である。日本ではまだまだ頭数が少ないらしい。

ヘックスは今年2月の生まれ。生後3ヶ月でボルダリングジムの看板犬としてやってきた。ジムのオーナーが飼い主で、日中はジムの中で過ごしている。偶々、初日にジムで出会ったときは、看板犬として躾けられるべくドッグトレーナーさんも来られていた。

仔犬ながら足のサイズは特大で、〝グレートスイスマウンテンドッグ〟という名の通り相当な大型犬に成長するそうだ。実際、毎週会う毎にみるみる体重が増え大きくなってきた。ジムの一角に置かれたケージはあっという間に手狭に…。

性格は極めて温厚でフレンドリー。仔犬だというのに吠えることが滅多にない。ボルダリングをする合間にヘックスの寝顔を眺めにいくとなんとも癒される。まさにドッグセラピー、である。

昨日、ジムに到着すると丁度〝おさんぽ〟に出発するところだった。「散歩、行きますか?」とオーナー。二つ返事で引き受けた。休憩中の他の常連客とともに〝おさんぽ〟へ。オーナーはジムの店番に残った。僕たちは、交代でヘックスのリードをもって歩いた。

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僕の通うボルダリングジムは田園地帯、水田と集落を結ぶ狭い農道に面している。一面の青田に囲まれた農道をヘックスと歩く。青田の中ではサギの仲間が頭を突き出している。田んぼに生息するカエルなどを食べに来ているのだろうか。この農道では、春から夏にかけてヒバリ、ケリ、ツバメ、サギや、カブトエビジャンボタニシ、アメンボなど、田んぼの景観の変化に伴って様々な生物を観察できる。真夏の日差しの中でも、まだ水を張ったままの青田のうえを渡る風は気持ち良い。

ヘックスは出発前にホースで水浴びしてもらっていたがみるみる乾いていく。黒、茶、白の混じる毛並みが美しい。仔犬とは思えない力でぐいぐいと歩こうとする。リードを持つ手応え十分だ。後半は、ジムへの家路を急ぐヘックスの息が荒くなった。

〝おさんぽ〟で疲れたのか、ケージに戻ったヘックスはほとんど横になって眠っていた。柔らかな耳が片一方、ひっくり返ったままだ。ときどき足がぴくぴくと動いている。

 

どんな夢を見ているのかなあ。

 

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