クロユリハゼの休日

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#202 〝タルカス〟

f:id:kuroyurihaze:20220120151502j:imageひょんなことから、作曲家吉松隆による〝タルカス〟のオーケストラ編曲のCDがあることを知った(藤岡幸夫指揮 東京フィルによるライブ録音)。これがすごい迫力の名演。

〝タルカス〟は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド〝エマーソン・レイク&パーマー(EL &P)〟によるセカンドアルバムに収録されたオリジナル組曲(1971年)。ファーストアルバム〝展覧会の絵〟はムソルグスキー作曲(オケ版はラヴェル編曲)をロックに仕立てたアルバムで話題となった。それ故もあって、プログレッシブ・ロックはクラシックファンとの親和性が高い。吉松隆は〝タルカス〟について、「ビートはロックそのものなのに、変拍子や構成は完全に〝春の祭典〟系の現代音楽でしょう。」と述べている。

ちょうど中学3年生の夏、EL &Pのファンとなった僕は来日公演(後楽園球場。当時、僕は東京都民。)を一人で聴きに行った。

キース・エマーソン(キイボード)、グレッグ・レイク(ベース、ボーカル)カール・パーマー(ドラムス)という、たった三人のロックグループが後楽園球場の特設ステージで〝展覧会の絵〟を演奏するさまは忘れられない。ギター抜きのロックグループというのも珍しかった。特に、キース・エマーソンは楽器を破壊しながら激しく動き回り演奏するのでびっくりした。

その、たった三人で演奏する〝タルカス〟を、フルオーケストラ版にした吉松隆。元がロックなだけにパーカッション(特にマリンバがとても効果的)や金管が活躍。さぞ演奏は大変だったろう。もちろん弦楽器も頑張っている。ライブで聴けた人はきっと幸せだ。

ちなみに、タイトルの〝タルカス〟は空想の怪物(レコードジャケットとCDに描かれている。)。火山の噴火で誕生し、世界を破壊し、別の空想怪物と戦い傷つき海に還っていくというストーリーの組曲

大阪で再演はないもんだろうか。