クロユリハゼの休日

やま とり うた みる きく よむ うみ など

# 203 100分de名著〝金子みすゞ詩集〟

NHKの〝100分 de 名著〟のテキストを、買って読んだ。今回は〝金子みすゞ詩集〟で、テキストの著者は松本侑子さんである。f:id:kuroyurihaze:20220205133850j:image

番組はテキストに沿って構成されるが、今回の松本侑子さんによる〝金子みすゞ詩集〟のテキストは、これだけで立派な金子みすゞ論、作品論、作家論。金子みすゞについてのイメージががらりと変わるくらいのインパクトがあった。

詳細なリサーチによって、みすゞの生きた時代背景、家庭環境などのバックボーンを地固めした上での作家論、作品論になっていて、結果として〝文学者〟としての金子みすゞにスポットが当てられている。それは、同時に、大正期における文学としての童謡の評価と、昭和期の童謡の衰退についての分析もされており、たいそう興味深く読めた。また、この時代の女性の地位の低さの中で、社会や家庭での生活にも制約を受け、詩人として生きる夢にもがくみすゞの姿も描いている。

童謡について、平明な口語詩のスタイル故に現代に蘇り生き続けているとの指摘も納得である。僕が好んで読む金子みすゞや、まどみちおの平明な口語詩や童謡は時代を超えて共感できる文学のスタイルだと思う。

一方で、文部省唱歌は、今でも懐かしい日本の情景を再現して親しまれてはいるが、文語による詩。なので、現代人にとっては難解だろう。唱歌のメロディーに親しんでいても、案外、歌詞の内容理解は怪しいと言わざるを得ない。(〝兎美味しかの山〟とか ^^; )

唱歌の歌詞は今や古典である。

今、合唱曲に選ばれることの多い金子みすゞまどみちお。童謡は詩作品として音楽に生まれ変わっている。思えば、谷川俊太郎の詩も童謡の流れをくんだスタイルが多いのではないか。

金子みすゞが詩人として現代に復活し、果たした役割の大きさを、今回、100分de 名著のテキストに著した松本侑子さんに拍手。

実際の放送は、このテキストのエッセンスを構成したもの。より深く知るためにテキストを読まれることをお勧めする。テキストは600円ぽっきりだ。