クロユリハゼの休日

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# 177 〝マヤカン〟(旧摩耶観光ホテル)

〝マヤカン〟こと、旧摩耶観光ホテルが国の登録有形文化財になるというニュースが…。f:id:kuroyurihaze:20210320144519j:image

〝廃墟の女王〟の異名をもつ〝マヤカン〟は六甲山系の摩耶山、ケーブルカーで上がった山中にある。

昭和初期に建造された豪華な洋館は、戦後ホテルとしてリニューアル開業するも災害により廃業。僕が学生の頃は学生サークルの合宿所として貸し出されていて、阪神間の学生から〝マヤカン〟と呼ばれて親しまれていた。その後閉鎖されて〝廃墟の女王〟になってしまったようだ。

 


実は、一度だけ学生サークルの合宿で利用したことがある。

 


その頃すでに廃墟を予感させる風情と、十分古びた豪華な調度品が相まって異境の地に踏みいるような妖しい雰囲気が漂っていた。

夜になると管理人さえ不在だった気がする。山中で、しかも貸し切りなので気兼ねなく夜遅くまで騒げるし、学生サークルの合宿には十分過ぎる広さがあった。

 


何の合宿だったかというと、演劇サークル、である。

 


ゼミの同級生が、卒業の年の記念にシェークスピア真夏の夜の夢〟を朝日生命ホールで上演するという。彼に誘われて僕も参加したのだ。

彼は学内の人形劇サークルのメンバーだったが、このシェークスピア劇団は彼が学内外の友人や、友人の友人などをかき集めた〝素人混成一発勝負劇団〟である。

卒業までの数ヶ月、短期決戦ながら毎日のように人形劇サークルの部室を拠点に活動した。滑舌や台詞の練習、小道具や衣装、チラシやチケットなどの役割分担、大道具はみんなで材料を集めて頑張って製作した。活動の中で脚本、演出、舞台監督など担当間で意見の相違が生じ、一丁前に〝上演危機〟状態になったりしたが、〝マヤカン〟の合宿時は皆で盛り上がって楽しんでいたと思う。衣装合わせや顔に化粧を初めてしてもらったのも〝マヤカン〟だった。

 


それにしても、本番は学内ではなく御堂筋に面した朝日生命ホールである。今思えば大胆な企画だった。企画した同級生は、開局したばかりのテレビ局に就職した。

 


真夏の夜の夢〟で、僕は王様シーシアスの役を当てられた。どう考えても演技は下手くそだったと思う。本番では、王様らしくワッハッハと笑う場面で、緊張して上手く笑えなかった。

 


4回生は一回きりの上演で終わったが、その後、3回生らが演劇サークルを存続させた。サークル名もそのままに、なんと、今も存続しているというからビックリである。(40年を越えている。随分前に、創立時メンバー招待の案内が来たが観に行かなかった。)

 


〝マヤカン〟こと、旧摩耶観光ホテルが有形文化財登録のニュースで、忘れかけていたシェークスピア劇のことを思い出したのだった。

 


神戸新聞。〝廃墟の女王〟の写真↓https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202103/sp/p3_0014164405.shtml