蝶の温室は文字通り、そこで様々な蝶が繁殖してひらひらと飛び交っているところ。食草や花が計画的に配置されているのだろう。人工的に構成された空間は百も承知、天上の、とか楽園とかいう言葉を使いたくなる、そこにずっと居たくなる何かがある。
沖縄、座間味諸島の安慶名敷島のサンゴ礁に初めて潜ったとき。色とりどりの枝サンゴの群落で無数のデバスズメダイが夏の陽光を受けてきらきらと蝶のように舞っていた。ここは天国だ、とその時思った。天上のように美しいという比喩だけではなく、潜りながら夢中になって、幸福感で笑っていた。
蝶の温室も安慶名敷島のサンゴ礁も、ひらひらと、きらきらと、しかし激しく蝶が、デバスズメダイが激しく、眼を凝らせば無数の繁殖活動が繰り広げられている。天上の、天国のような幸福感は美しい花々やサンゴ礁を舞台にいのちを繋ぐエネルギーによってもたらされている。
そんな不思議の中に、景色の中に自分の身を置くことを、ときどき求めて行くのだろうと思う。