クロユリハゼの休日

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# 206 〝瀧幹〟

河内長野市の滝畑ふるさと文化財の森センターの常設展示が昨年秋に新しくなった。

テーマは〝瀧幹〟。f:id:kuroyurihaze:20220320154824j:image

これだけでは何のことかわからない。〝瀧〟は滝畑、〝幹〟は幹線のこと。滝畑幹線とは、約100年前にこの地で水力発電が始まって、その送電線の名が滝畑幹線。

今の滝畑ダムとは直接関係はないが、滝畑に流れ込む石川源流の谷の豊富な水量を利用するという意味では共通する。

取水口から水路を通し、今から見ると極小の発電機に落とし込んで発電し、滝畑幹線を通して河内長野市街に送電したという。それでも100年前の電力需要には足りたのだ。極小とはいえ滝畑地区に二基の発電所金剛山の千早川に二基の発電所があり、千早幹線からも河内長野市街に送電していた。

そのような訳で、滝畑という大阪の最深部の山奥の集落は、〝瀧幹〟のおかげで早くから電化の恩恵に浴していたのだ。

新しい常設展示は、このささやかな電力会社の水路や発電所の遺構や当時の新聞記事や古文書を丁寧に調査して展示している。f:id:kuroyurihaze:20220320154853j:image

展示の工夫も丁寧で、遺構の写真や水路や発電所の位置が大きな地図に分かりやすく示されている。f:id:kuroyurihaze:20220320154910j:image

小さな小さな博物館ではあるが、企画・調査・展示とも精一杯の努力の跡が見てとれる。

こうした良心的な展示に出会えたことで満ち足りた気分で滝畑をあとにした。

↓旧梶谷家住宅の茅葺き

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※滝畑ふるさと文化財の森センターは、岩湧山の茅をはじめ檜皮など文化財修復資材の供給・保全・育成と技能者の養成等の普及啓発活動を進める拠点。また、旧滝畑民俗資料館の機能もあわせ持つ施設として、平成19年5月に開館した。