クロユリハゼの休日

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# 186 〝空みがき〟

f:id:kuroyurihaze:20210704211259j:image昨日は合唱団の練習があった。(緊急事態宣言が解除されて、練習場は制限つきで利用できる。)来年の定期演奏会で歌う曲のパート練習、『三つの不思議な仕事』という混声合唱作品の中にある〝空みがき〟という曲だ。

 

詩は池澤夏樹、曲は池辺晋一郎による。楽譜は1978年に出版されているので、40年あまり前の作品。

 

4年前の定期演奏会で合唱団が池辺晋一郎氏をゲストにお招きした際、演奏会の翌日に堺での昼食に同席させて頂いた。僕の記憶では、その際に池辺さんの携帯にメール着信があり、メールを読まれた後に、「(海外にいる)池澤夏樹からのメールで、…(池澤夏樹とは)友達なんだ。」と、おっしゃっていた。

 

当時、池澤夏樹さんは新聞に月一回のペースでコラムを担当されていて、その辛口の文明批評とも言える文章を愛読していた僕は、〝そうか、池辺さんと池澤さんはお友達なんだ。〟と、嬉しい気持ちになった。

 

それより以前、池澤さんの文章をあちこちで読むようになった頃に、池澤さんの父親が小説家の福永武彦と知った。あまり小説を読まないほうの僕が、どういうわけか福永武彦の小説「草の花」など何作かを学生の頃に読んでいた。(小学生の時に学校の講堂で観た怪獣映画〝モスラ〟の原作は、福永武彦堀田善衛中村真一郎という錚々たる文学者によるものと知ったのは三十代の頃。)

 

話を、池辺晋一郎さんと池澤夏樹さんに戻す。

 

『三つの不思議な仕事』の出版譜のはじめに池辺晋一郎さんの文がある。

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※「三つの不思議な仕事」は、この出版のための書きおろしです。…(中略)…いわば軽いタッチの、親しみ易いものを作りたい、という企ては、1972年、池澤さんと出会った時から、すでに在ったものでした。昨年の遅い夏、アテネに住んでいた池澤さんを訪ね、共にエーゲ海の島々を旅しながら、毎日この曲の構想を語り合ったことを、今なつかしく想い起こします。エーゲ海の空と海のようなのびやかさが、この曲の底に流れていてほしい、と希っています。     (後略)

       1978年5月  池辺晋一郎

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〝空みがき〟は、木のてっぺんに腰かけて、空色の空のガラスをみがく仕事。布でキュキュキュとみがき、風がサラサラと流してくれ、夜には星座のランプを灯す、といった内容の詩。

曲想も軽やかで優しい素敵な曲だ。

エーゲ海で語り合う詩人(小説家)と作曲家を想いながら、のびやかに合唱してみたい。

 

※「三つの不思議な仕事」
 東京混声合唱団の演奏 YouTube
   ↓
https://www.youtube.com/watch?v=TQ_moUwCVLo&t=9s