クロユリハゼの休日

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# 187 〝婦人と朝顔〟

 

 

なんで、この絵が〝あやしい〟のか、それがあやしい。

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藤島武二の油絵作品『婦人と朝顔』が出品されている〝あやしい絵〟展[@大阪歴史博物館

幕末から明治・大正期を中心にした日本の〝あやしい絵〟をテーマにしている。甲斐庄楠音の見るからに〝あやしい絵〟をはじめ、上村松園鏑木清方のある種の女性像は予想される範囲ではある。ならば、『婦人と朝顔』の〝あやしい〟は、〝妖しい〟〝怪しい〟〝奇しい〟など、どの〝あやしい〟に当てはまるのか。

 

藤島武二『婦人と朝顔』には、以前、お目にかかったことがある。東京の博物館か美術館に行った時、偶々展示していたのだ。その時に、この絵の前に釘付けになった。魅了されたという言葉が相応しい。

なぜ魅了されたのか、なんだかよく分からない。そういう意味では、やはり〝あやしい〟。ただ、明治時代に描かれた油絵の、この婦人モデルの表情に不意を突かれたことは間違いない。〝あやしい絵〟展のお目当ては『婦人と朝顔』の一点縛りと言ってよかった。

実際、展覧会場を一巡してみると、数々の〝あやしい〟絵の毒気に当てられる中、『婦人と朝顔』一点だけで全ての毒気を中和していると感じた。謎を残しつつ、バランスがとれた展覧会になっているのだ。

『婦人と朝顔』が出品されていなかったら、僕が大阪歴史博物館まで足を運んだかどうかは怪しい。…という意味では、やはり〝あやしい〟のだった。

 

 

※出品目録に、『婦人と朝顔』は個人蔵と記載されている。所有されているのはどんな方なのか。