クロユリハゼの休日

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#111 兵庫県立横尾救急病院展

コロナ感染対策のため体温チェック、問診票(代表者氏名と連絡先)記入、診察券(当日券)を購入して各診療科(展示室)を巡る。美術館従事者は全て白衣を身に纏い、細かいところまでさりげなく病院仕様に変更して、テーマパークさながらの横尾忠則現代美術館。f:id:kuroyurihaze:20200715002409j:image

小さな一室に、横尾忠則がその著書の読者として主治医と仰ぐ日野原重明氏の肖像画。そして美術展によくある作家年譜は、横尾忠則個人の病歴、入院歴がずら〜っと並び、展示作品との関連がわかる年譜になっている。こんなに救急搬送と入院を繰り返す人がいるんだ、というレベル。救急病院展を開催するに相応しいアーチストと納得。

そして展示室。例えば、スポーツ外来は〝運動する肉体〟、小児科が〝記憶装置としての肉体〟、老年病科が〝老いと遊び〟など各診療科のテーマ設定と全体構成が面白い。f:id:kuroyurihaze:20200715002428j:image

さらに〝コロナ〟が加わった。この展覧会の開会式では横尾忠則の提案で式参列者全員がマスクをしている。(これが1月31日ですぜ。)本来は5月までの会期がコロナ休館を挟んで8月まで会期延長。展示内容もコロナ関連のコラージュ(マスクアート)が連日追加されている。この救急病院展横尾忠則個人の枠を超えて、コロナ感染下の社会現象とそれに伴う作家の思索までテーマに加わって重層化している。こんな展覧会、観たことない。f:id:kuroyurihaze:20200715003857j:image

横尾忠則の展覧会。他のアーチストには感じない何かをいつも感じる。お櫃(おひつ)の中の炊き立てのごはんを杓文字(しゃもじ)でひっくり返すと、ごはんがほくほくとする感じ、というか、脳みその神経の束が頭蓋骨の中でぐるぐるほぐされるような。f:id:kuroyurihaze:20200715002504j:image

〝Y字路〟〝ターザン〟〝三島由紀夫〟〝一寸法師〟〝宮本武蔵〟〝少年探偵団〟などなど、変幻自在に繰り返し現れるモチーフ。無尽蔵とも思える表現の多彩さに接することで、(ベタな言い方ではあるが、ワタクシとしては)『元気になれる』。

 

一方、ワタクシの病気(cll)はと言えば、今月は検査・診察あり。主治医「何か変わったことは?」また、まだまだ経過観察がつづく。ひょっとして東京五輪までもつか、というのは杞憂に終わった。…というか、東京五輪という期限そのものがなくなればワタクシの負けはない。この逆説と兵庫県立横尾救急病院展がワタクシのカラダの中をクロスオーバーするのだった。

 

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